直虎50話(最終回)「石を継ぐ者」想いのバトンは直政に
とどでございます。
今回のサブタイトルの元ネタは「星を継ぐもの」。
響きとしては「エラゴン 遺志を継ぐ者」の方が近いですかね。
(追記)政次役の高橋一生さんが最初に出演した映画が「ほしをつぐもの」でしたね。中の人的にこっちが正解っぽい。
まぁでも戦のない世界を作る、という大きなスケールの話であると捉えれば星レベルと言っても過言では……過言でしたすみません。
最終回ですよ、最終回!!
最初は「3話切りするかも〜」なんてアホなこと言ってましたが、なんだかんだ最終回まで見続けてしまいました。
政次が去ってからは、しょんぼりしながら見ていましたが、終盤の井伊直政へと想いをつなげていくところは、このドラマのテーマとも言うべき部分だったと思います。
最終回のタイトルにもあるように、このドラマのテーマは「想いをつなげる」ということだったと捉えています。
井伊の初代から始まり、直平、直盛、直親、そして政次を経て直虎へ。
直虎から直政へと想いが伝えられてきました。
直虎にバトンが渡されるまでは、皆時代に翻弄されて散って行きました。
その姿を見た直虎は、自分自身に時代を作る力は無くとも、自分の望む世界を作れるであろう人を支えることによって、理想の世界を作ろうとしました。
戦の存在によって命を落とした者たちの無念を晴らすように描いた戦のない世界。
このドラマではその夢を預けるに値する徳川家康を支えることで、200年を超える戦乱の無い世を実現しました。
私はどうしても英雄レベルの活躍に注目してしまいがちでしたが、その英雄を支えてくれた人を密度濃く描いたこの作品は、真田丸とはまた違ったベクトルで良い作品であったと思います。
次の大河が、戦のない世を終わらせる話、しかも倒幕側の話というのはちょっと余韻がない感じですけど。
真田丸的にはリベンジですが、直虎的には井伊の名を継ぐ直弼がヤミウチ!! されてしまっているので、井戸から覗いた時にはショックだったでしょうね。
豆狸っぷりを発揮
家康の豆狸っぷりがどんどん出てきたようです。
信長の弔い合戦と称して甲斐・信濃へ侵攻し始めました。
実は徳川もハメようとしていたかもしれない明智光秀はあっさり討伐されたため、大手を振って信長の弔いだと言うことができました。
北条は「なんでこっち来た」と困ったことでしょう。
動乱の時代ですから、これくらいの強かさは必要ですね。
本編に名前だけしか出てこなかった秀吉との戦いもありますし、日和っていたら勝てません。
エピローグの長久手はおそらく小牧長久手の戦いでしょうから、戦い自体はドラマ内でちょっと描かれましたね。
光秀がやられたということは……
その子、自然(じねん)がピンチ。
自然を救うべく、堺に来ていた直虎は知らせを受け、井伊谷に戻ることにしました。
井伊谷に戻るということは、龍雲丸ともまたお別れです。
今度は南蛮へのお誘いをする龍雲丸でしたが、あっさりと断られました。
龍雲丸も分かっていたようで、こちらもあっさりと見送ることに。
一度やると決めたらやり遂げる、そういうおなごだとよく知っているからこその対応。
直虎は南蛮に向かう龍雲丸に、餞別として水筒を渡しました。
初めて会った時に渡した分と合わせて2個。
直虎の帰り際、
「我より先に死ぬなよ」
「そっちもな」
と「我ら生まれた時は違えど」の桃園の誓いみたいなやり取りを交わしました。
自然を守れ!
見出しだけ見るとエコ団体のスローガンみたい。
井伊谷に戻った直虎は、急ぎ自然を隠し里へ連れていくよう手配。
しかし、徳川からは万千代と於大の方(家康の母)が、明智の謀反に加担した証拠となる自然を始末しようとやって来ました。
謀反を起こした親が討ち取られ、その子供も狙われる、というのは実に第1話からあった構図。
自然を追って来た万千代自身も、今川に命を狙われていました。
だからこそ、於大の方の命令とは言え自然を排除しようとした万千代を傑山さんは許せなかったことでしょう。
かつて命を狙われる恐怖を教えるため、虎松に弓を向けたことがありましたが、今回は命を狙うのを咎めるために弓を向けていましたね。
流石に今回はお漏らしをしなかったけど。
万千代自身、自然を排除したくないけど、これから天下を取らせようとする家康が危機に陥ることは避けたい、というジレンマに襲われているような顔でした。
一緒に来ていた於大の方が「お家のため、私が命じた」と出て来ましたが、この人は「信康を切りなさい」と言っていた時から一貫して「お家のために」という考え方でしたね。
その於大の方が守ろうとする家康自身が「お家のために命を奪われる世などあってはならない」と行動しているすれ違い。
直虎が「可愛いのは自分の子だけか」と問えば、於大の方は「子を産んだことのないそなたには分からぬ」と返すし、さらに「あいにく子を産んだことがないから、全ての子が等しく可愛いのだ」と女の戦いが勃発。
女の戦いは寿桂尼様とやりあって以来ですから、なんだか懐かしい気もします。
実は信長さんちの子です!
於大の方と女の戦いを繰り広げている間に、織田の武将がやって来ちゃいました。
当然、「後ろにいる子供、誰よ」ってなりますよね。
ここで直虎が「亡き信長公の遺児です」とブラフ。
その証拠にと差し出したのは、中野直之と六左衛門が長篠の戦いで、木を調達した褒美に信長からもらった茶碗。
城ひとつ買えるシロモノでした。
これだけのものを貰い、さらには自筆の手紙まであるとなると、嘘くさいとはいえ織田の遺臣たちも下手に自然に手を出せません。
間違って斬ったら取り返しがつかないし。
結局自然を差し出すことなく切り抜けました。
直虎が万千代に「のぅ? 斬らずとも済んだではないか」と言っていたように、ここは彼女にとっての戦いの場でした。
命をやり取りする戦いを避けるための戦い。
万千代の前で見事に自然を救ってみせました。
これは万千代にも影響を与えていたようです。
於大の方も、「織田様の忘れ形見のこと、お頼み申す」と自然を明智の子ではないということにしてくれる様子でしたし、無事に切り抜けました。
自然にちなんだ名前
なんとか生き延びた自然は寺に入って修行することに。
虎松がそうであったように、寺は身を隠すには絶好の場所ですね。
自然は悦岫(えっしゅう)として生きることに。
何ものにもとらわれず、自然に生きることを喜ぶ、だそうで。
龍潭寺のWebサイトを見てみたら、悦岫永怡なる人物が龍潭寺四世住職を務めていたそうです。
南渓瑞聞(二世住職)、傑山宗俊(三世住職)、悦岫永怡(四世住職)、昊天宗建(五世住職)の系譜で龍潭寺を継いだとあります。
自然はこの四代目住職に当たるのかな。
だいぶ年上の昊天さんが五代目というのにもビビります。
彦根にも龍潭寺を建てて、そっちにいたからですかね。
ちなみに弓の名手・傑山さんと長刀の名手・昊天さんは小牧長久手の戦いに井伊直政と一緒に参加していたようです。強い。
驚いた顔は父親譲り
井伊にいる縁者たちを万千代に託し、井伊は表の世界で生きづらい人を守る場所にしようと考える直虎。
近藤康用の元にいる高瀬も万千代に預けるため、近藤を訪ねました。
ちょうど近藤からも話があり、「高瀬を養子にもらって、万千代に嫁がせてはどうかと思ってな。知らぬふりをして手元に置いておいたが、それも潮時だろう」と直虎と高瀬が親子であることもバレてました。
これを聞いて驚く直虎と高瀬。
驚いた顔はかつての直盛(直虎の父)を思い出します。流石に叫ぶほどのテンションではないけど。
直虎は近藤の気遣いに感謝しつつ、「井伊谷の井伊をたたんで、徳川に天下を取らせようと思います」と自分の野望を宣言。
近藤は「それでいいのか?」と気遣いますが、井伊谷の安堵を気にしていたお前が言うなとツッコミそうになりました。
近藤の基本スタンスは、政次への嫉妬だったように思いますが、政次退場後も回によって井伊寄りの発言が多かったり、そうかと思えば敵対的な発言をしたりと、割とブレていたような気がします。
演出担当は回によってバラバラなので、そこに巻き込まれたからかな。
それはさておき、近藤と話をしている最中、直虎は息苦しさを感じながら倒れてしまいました。
あぁ、ついに……。
床に伏せる直虎
これまで直盛、直平、直親、政次と、井伊の人々を見送ってきた直虎。
なかなか治らない咳に、「心残りはないつもりでいたが、まだ生きたいと願ってしまう」と弱音を吐きます。
南渓和尚は直虎を励ますため、「戦のない世が実現したら、大きな盃で呑もう」と言います。
そう言えば龍雲丸が井伊に来ることになった時にはべろんべろんになってました。懐かしい。
そんな未来を語る様子も、この後を思うと悲しくなってきます。
笛がない
甲斐・信濃に侵攻する徳川軍は、上野方面を経由してやってきた北条とぶつかることに。
本陣への報告の中にしれっと「真田が北条に付きました」と有ったのに「ふふっ」てなりました。
去年の大河を思い出します。
鬱屈とした気分を晴らすためか、家康は万千代に「笛を吹け」と命じました。
万千代は荷物の中を探すものの、何故か笛が見つかりません。
探し物が見つからないのは焦りますね。しかも上司の命令だし。
みんながお迎え
直虎が目を覚まして体を起こすと笛の音が。
どうやら井伊谷にあるようです。
笛の音がする場所に向かえば、なんと幼き日の亀之丞が笛を吹いているではありませんか。
横からは鶴丸が。
直虎が「何でそなた達は子供の姿なのじゃ」と問えば、「そなたも子供ではないか」と返され、何と直虎も子供の姿に戻っているではありませんか。
「これから未来を見に行こう」と言う亀之丞、鶴丸のふたりに、何かを察したのか「まだやり残したことがあるから行けぬ!」と抵抗するおとわ。
可愛らしい感じで来てますけど、これ死神のお迎えと同じですもんね。
「俺の意思をおとわが継いでくれたように、おとわの意思も誰かが継ぐ」
だからもう休め、と言わんばかりに諭します。
「今度は一緒に行けるな」と、そこにやって来たのはまさかの龍雲丸。
彼もまた子供の姿ですが、ここにいるってことは……。
冒頭にあった約束がこんなすぐに果たされるとは。
海辺に打ち上げられたふたつの水筒が切ないです。
あ、直親は龍雲丸と初対面のはずですが、さらっと受け入れてましたね。政次から話を聞いたのかな。
「いざ!」で4人が井戸を覗き込むシーンは予告にもありましたが、この流れで見るとグッときました。
竜宮小僧がいた
井戸の横で永い眠りについた直虎の横に、謎の少年がいました。
あれは竜宮小僧でしょうか。
直親、政次、そして龍雲丸の姿は、竜宮小僧が最後に見せてくれた幻だったのかも。
でもそのおかげで直虎が笑いながら逝けたようです。
正体はわからずでしたが、存在はしているみたい。
この後直虎の葬儀が行われましたが、傑山さんが泣きながら読経に詰まるところもグッとくるポイントでした。
和尚様が「先に逝くなど、罰当たりめ」とひとり悲しみに暮れる様子もまた悲し。
和尚様、大勢を見送ってきたんだもんなぁ……。
万千代にも知らせが
直虎の訃報は家康、そして万千代にも届けられました。
万千代と同じ場にいた直之や六左衛門は、直虎が一番大変な時から一緒にいたため、その悲しみも大きなものでした。
しばらくは気の抜けたままいた万千代でしたが、「目障りだ! 下がれ!」という榊原康政のツンデレによって外の空気を吸いに行くことに。
玄関で南渓和尚と会うことができました。
労咳(ろうがい、結核のこと)で亡くなったことが告げられ、和尚様から手渡されたのは碁石。
政次が直虎に託した碁石ですね。
この碁石から、万千代は直虎が描いた戦のない世を実現することを改めて決意しました。
武力による戦いを行わずに自然を救った姿を見ていましたもんね。
和尚様の「戦わない道を、殿は小さな谷でやった。そなたは日の本でやれ」と言う言葉に、何をすべきか思い至った万千代はすぐに会議に戻りました。
「若造であり、潰れた家の子でも重宝されている姿は交渉に使える」と北条との和睦の使者に立候補。
先に甲斐・信濃の国衆たちの起請文を集めて、甲斐・信濃を見事に取ってきました。
直之、六左衛門、万福たちとシンクロして起請文の名前を描いてもらうシーンは良かったですね。
画面4分割って大河ではあまり見ないかも。
井戸を覗き込むシーンといい、今回は視聴者を巻き込んだ形の演出が光ります。
そして、ついに、とうとう、ようやく
北条との和睦の手柄により、井伊の通り字である直、小野の通り字である政を取って「直政」を名乗るようになりました。
今回の大河はここに至るための物語でしたね。
今川に翻弄されながらもバトンを繋いできた井伊の家の者たちと、奸臣と言われながらも井伊のために生きた政次、その想いが繋がった瞬間です。
名前をもらった時の「百尺竿頭に一歩を進む」「大死一番絶後に蘇る」は30話で直虎が言った禅語です。
あの時は、今川の徳政令で井伊が潰れるかもしれない、といった状況でした。
井伊が潰れることを回避しようと努力していましたが、いっそ徳政令で潰してしまえば、その結果今川も財政難で潰れるので、あとは今川家臣の首を持って徳川に駆け込み、井伊を蘇らせよう、といったところ。
今回は十分努力した先にも、慢心せずさらに努力し、自分の身を粉にして働きます、といった感じですが、直政が「大死あってこそ」と強調したのは、今回言っていた「潰れた家の子」にも繋がっています。
30話で目指した井伊の蘇りは、ここに実現されました。
徳川から松下をはじめ、井伊谷三人衆、瀬戸方久たちが新たに直政の家臣となりました。方久はスルーされてたけど。
「潰れる家の哀れをなくす」という直虎の想いを汲み取ってくれた家康の配慮により、武田の遺臣である赤備え軍団も加わることに。
エピローグ
小牧長久手の戦いで軍を任された直政。
「どうせあの若い大将は本陣で座っているだけだ」という武田の遺臣の言葉にぐぬぬ顔。
ナメんな!! とばかりに一番槍で戦場を駆け抜けて行きました。
元服した後も、この性格はそのままでしたね。
直虎が馬で駆けていた姿と重ねていたのがまた良かったです。
そしてこの構図の重ね合わせは最後まで。
直政と家康が囲碁を打っている姿は、直虎と政次が囲碁を打っている姿と重なりました。
ナレーションとのリンクも素敵。
「翻弄されながらも生き抜いた、そのおんなの名は」の梅雀師匠の語りから、「おとわ」と直親が呼びかけるのが良かったです。
「直虎」ではなくて「おとわ」なのがポイント。
城主、当主として背負ってきた重荷や想いを直政に託したことで、ひとりの女の子に戻ったのです。
最後に政次が黒の碁石を置いて、「完」。
最後まで碁にこだわっていたところもスタッフの愛を感じます。
方久も「カーンカンカンカン。完にございます」と言っていたし、綺麗に終わった感じがします。
まとめ
2017年の大河も最終回を迎えました。
おんな城主として井伊の城で「戦わない道」を実現しようとした直虎はその生涯を終え、井伊直政へと意志を託しました。
「戦わない道」は当時の武家社会では異端となる考えでしたが、井伊直政が支え、それを実現した徳川家康は実に260年もの平和な時代を築きました。
井戸を覗き込んだおとわも、想いを託して実現された世界を見ることができたことでしょう。
おまけ
サブタイトルの元ネタ集作りました。
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