直虎43話「恩賞の彼方に」Excelマスター万千代の貢献
とどでございます。
今回のサブタイトルの元ネタは「恩讐の彼方に」。
菊池寛氏の小説です。大正8年=1919年発表なので、ドイツのワイマール憲法が制定されたのと同じ年です。
「今から100年前」というと明治の印象がありましたが、いつのまにか大正が100年前に。時間の流れって怖い。
今回は直虎の中でもまた時間経過がありました。土砂崩れを防ぐための松を植え、3年の月日が経過。
その間に瀬戸村の甚兵衛が逝去したようです。第13回「城主はつらいよ」からの付き合いなので寂しいですね。
そう考えると、おとわ様が幼少の頃から一緒にいる南渓和尚って何歳やねんとツッコミを入れざるを得ない。
一方、虎松(万千代)は順調に家康のためになる働きをしているようでした。特にExcelのごとく行と列で長篠の戦いの戦果をまとめているのには圧巻。そのうちマクロとか使いそう。
いやこの出世スピードはもう「主人公補正」というマクロを使っているようなものだけど、逸話を見るとあながち「このドラマ盛りすぎ」とも言えないのが直政のすごいところ。
色小姓になっちゃう?
「色小姓とすれば嫌がらせも無くなるよ」と割と熱心に勧誘してましたね。
当時のいくつかの資料に「ルックスもイケメンだ」と書かれているので、多くの人がイケメンだと感じる容姿だったようで。
衆道を嗜まない家康が宗旨替えしようとするレベルの美少年。それなんて主人公。とはいえ、そんなこと言われても万千代は応じませんでした。
山の神がお怒りじゃ!
台風が来ている時に土砂崩れの話題は割とシャレにならないですが、撮影時に放送日の天気まで予測しろというのは無理な話。
瀬戸村の甚兵衛が雨によって土砂崩れが起きていることに気付きました。原因を推測するに、長篠の戦いのために木を切り出したことが引き金になったようです。
傑山さんと直虎で山の様子を調査することに。井伊谷にいる民のために行動する姿は、彼女が幼い頃になろうと夢見た竜宮小僧のものですね。
井伊の家名を捨てたことで、本来のありたい姿に戻れたような気がします。
小姓にはなったけど
新人いじめがありました。「何もしなくていい」と仕事を教えてくれない先輩コワイ。先輩たちは何も教えてくれないので、万千代は自分から仕事を探していくスタイルで攻めます。
泥の水たまりを見て「地面をならしておくか。草履が汚れるのもよくないし」と前の部署の経験も生かしています。
これだけ考えて動ける人がいたら組織としても嬉しいですね。夜には得意分野の薬学で家康に薬を献上しようとしますし。そのおかげでまたしても強みを発揮するチャンスを得ました。
そう、Excelでのデータ入力です。
Excelマスター万千代
先の長篠の戦いにおける戦果を整理していた家康。首級マシマシ格タカメで書かれた報告書と格闘しているようです。
戦果報告が盛られているのはいつものことらしく、それを勘案して恩賞を出すのに苦労している姿を見て、万千代が攻めます。
「よろしければ、縦に家の名前、横に首級の数を並べ、見やすくしましょうか」と提案。
安土桃山時代に2次元的なデータ処理をするなんて。まるでExcelのデータ入力かのごとき仕事をする万千代。
時代を先取りしすぎです。さすが主人公。でも寝所から朝帰りするのを見られてしまいました。
常慶からの依頼
土砂崩れを防ぐため、木を植えるマニュアルの絵を描いて欲しいとのこと。万千代は絵を描く代わりに、井伊の薬を送ってくれと頼みます。
家康が健康に気を配っているのを知ったので、その需要に応えようとしています。今回は万千代の強みを前面に押し出してきますね。
- 薬学知識があります
- 草履番の経験から、足元にも気を配ります
- 絵も得意です
- 家康に気に入られています
- 何よりイケメンです
現代の会社に置き換えれば、薬学部卒で気配り上手、Excelもバリバリ使えるし、Photoshop、Illustratorまでマスターしていて、前の部署では替えが効かないと言われるレベルの仕事をし、さらには社長にも気に入られている超イケメン。
うん、先輩は嫉妬するわ。余談ですが、陸王にも常慶役の和田さんが出てて笑いが出てしまいました。マラソンする常慶。シュールです。
正直な六左衛門
井伊を自分の出世のためにうまく使おうとする万千代を警戒する直虎。和尚様はそれが分かっているからか、松の植え方の絵が万千代が描いたものだということを伏せていましたが、「さすが虎松様!」とあっさりバラす六左衛門。
六左衛門は癒し。
直虎は完全には納得しませんでしたが、絵を持って近藤の元に向かいました。
名を残すことの誘惑
臨済禅師の説話「厳岩栽松(厳岩に松を栽える)」を引っ張り出して、近藤に土木事業の予算を出してもらおうとする直虎。
今の我々のためではなく、後の世のために役立つことをしておくのが大事だと説き、そうなれば近藤殿の名前も残るだろう、と伝えました。
男の世界で生きてきた直虎は男心をよく理解しているようです。
「君の名前が後世まで残る事業だよ」なんて言われたら心動かされてしまいます。
戦国時代であれば家名を広めることは重要な要素ですし、ましてや子々孫々「見よ、あれが近藤の松」と語り継がれる(かも)ともなれば、そりゃもう乗っかるしかありません。
特に、近藤は政次がネガティブな意味で名を残してしまったのを見ているわけですから、政次に対するコンプレックスを抱いている近藤にとって、ポジティブな名の残し方は願ってもないチャンスだったことでしょう。
……政次がネガティブな名前の残し方をするきっかけとなった近藤がこのように振る舞うのは微妙な気持ちですが。
山の前では人は平等
近藤から予算を引っ張り出してきた直虎は、瀬戸村・祝田村の民に協力を依頼します。村人たちは、自分たちが木を切ったわけじゃないのに、この忙しい時期に木を植えなきゃいけないなんてきついっす、と正直に伝えました。
武士が勝手に木を切ったんだから、武士たちが植えるのが筋だ、と正論。しかし「山の前では武士も農民もなく人は平等である」と瀬戸村の甚兵衛が説きます。
彼のおかげで、村の人々は木を植えるのに協力してくれることになりました。実際、土砂崩れが起きた時に危ないのは瀬戸村、祝田村ですから、自分たちや子供達のために木を植えておくのは意味があることです。
もっと言えば、彼らが住んでいるのは徳川が安堵している領地なので、長篠で武田を撃破していなかったら武田軍に荒らされていた可能性もあります。
そう考えると必ずしも木を切ったことを責められるとも言えません。もちろん大名の版図まで頭に入っている農民なんていたら、「あんた士官した方がいいよ」ってなりますけど。
甚兵衛の松
万千代が描いた絵を元に、木を切った場所に松を植えていくことに。花粉症の私にとっては、臨済禅師が杉ではなく松を植えていたことに感謝したい気持ちでいっぱいです。
今回の植林事業は、対外的には近藤の松ということになりそうですが、実際に臨済禅師のように行動していたのは甚兵衛でした。
武士のせいにして目を瞑っていることもできたでしょうが、村のため、未来のために直虎に働きかけてくれたのは外でもない甚兵衛です。直虎もそれを分かっていたからか、木を切ったらその分植える、という教えに「甚兵衛の松」なんて名前をつけました。
行動規範にエピソード名を付けると覚えやすい、というのは確かにその通りですね。臨済禅師のように、この行動によって名前を残した甚兵衛なのでした。
また、甚兵衛が「清風明月を払い、名月清風を払う」の言葉を覚えていてくれたのも直虎にとって嬉しいポイントでした。
この言葉が出てきたのは、第14回「徳政令の行方」。どちらも主体であり、客体である、お互いを補い合う関係でありたいという直虎の願いから出た言葉でした。
※ただしイケメンに限る
井伊からの薬を手に入れた万千代は、早速家康に献上しようとするものの、嫉妬に狂う先輩小姓に阻まれます。
めんどくさくなった万千代は、「殿から手を出されたぞ!」と宣言。「殿は衆道は嗜まぬ!」と反撃する小五郎でしたが、「それはお前らがブサメンだっただけだ!」とバッサリ。
朝帰りのシーンを目撃したこともあって、小五郎たち先輩小姓はこの話を信じ、万千代と万福に手を出せなくなってしまいました。この件もちゃんと家康に報告しているあたり、万千代はいい部下ですね。
色小姓宣言をした結果、家康と長く話せる時間を手に入れたのもでかいです。城主と話して学べる時間なんて貴重ですし。そして岡崎への恩賞について現場の様子を見る、という大役まで仰せつかりました。
この時の家康の目論見としては、いずれは家康の息子・信康の家臣として万千代を付けたい、というもの。だからこそ早いうちから馬まで貸して岡崎へ走らせました。
信康は信康で、岡崎の恩賞が少なくとも、いずれは家康の家臣や領土が自分のものになるから今回は泣こう、と長い目で見ることができていました。
信康も若いのに優秀ですね。それだけにこの後を思うと悲しい。
だんだんと物語をたたみ始めました
今回の権兵衛の退場に始まり、次回は直虎の母・祐椿尼も……といった予告。予告で椿の花がアップになっていたのは、彼女の名前に椿が入っているから。それと対照的に万千代の名前連呼がありシュールでした。
これから隆興する者、去っていく者の対比が象徴的な回になりそうです。直虎の仕事はほとんど終わったようなものだし、この物語は万千代が井伊直政になって終わり、なのかな。
関ヶ原までまだ20年以上もありますからね。でも真田丸で井伊直政のことは徹底的に出さないようにしていたから、ある程度は出てくるのでしょうか。
伏線回収が始まりましたし、あとは竜宮小僧の正体やご初代様の話も回収して欲しいところ。ラストシーンは「待たせたな、直親、政次」でまた井戸を囲み、幼馴染3人が笑いあってエンドロール。などと妄想。
まとめ
伏線回収や登場人物の退場が始まり、だんだんと物語が終わりに近づいてきたのを感じます。万千代の活躍も気になる反面、直虎の関わりが少なくなっているのはやはり寂しいものです。
おまけ
サブタイトルの元ネタ集作りました。
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