西郷どん第2話「立派なお侍」財政再建のプロ・調所広郷の年貢取り立て講座
とどでございます。
第二話にして西郷さん大きくなってましたね。
郡方書役助(こおりかたかきやくたすけ)という、年貢を取り立てる役人として働いているようでしたが、年貢の取り立てで一悶着が。
役人には賄賂が渡されるし、年貢のための借金によって村の子供は売られそうになるしで、てんやわんや。
役人が年貢を懐に入れて腐っているだけかと重いきや、農民側も脱年貢をしてました。
心情的には農民に味方しようとしたのに、その農民が不正を行なっていたのはショックだったことでしょう。
それでも少年時代に会った島津斉彬(しまづなりあきら)の言葉を受けて、弱い者の味方をしようとしていた姿は素晴らしいものです。
今回も何となく話の流れは分かっても、たまに何言っているか分からないセリフがちらほらありました。
「〜もす」だと「〜ます」、「〜もはん」だと「〜ません」、でしょうか。この辺りはいけそうですが、宴会のシーンはちょっと難しかったです。
ちゃんと鹿児島弁を勉強しないとですね。申し訳ありもはん。
年貢の取り立て
やらないと藩が立ち行かなくなるし、やったらやったで農民たちからは恨まれるしで、胃が痛いポジションですね。
豊作の年はまだいいですが、凶作だと農民にとっては冗談抜きで死活問題。
定額で年貢を取り立てる場合の恐ろしい部分です。住宅ローンの固定金利みたいな感じ。
生活が苦しいとの農民の訴えを聞く西郷さんでしたが、その傍で、上司が賄賂を受け取ってお目こぼしをしようとしていました。
おお……腐敗の匂いが。
賄賂用の銭を用意するのも負担でしょうに、役人への心付けには、それを上回るメリットがあるのでしょう。
人買いの危機
借金のかたに子供を取られるとか時代劇かよ。……時代劇でした。
薩摩藩は特に重い年貢を課していたようで、農民たちは借金してでも年貢を納めていたようです。
借金だっていつかは返さないといけない訳で、それが出来なければ代わりに大事なものを持って行かれてしまいます。
今回は西郷さんの見ているときに、「ふき」という子供が借金のかたに連れて行かれそうになりました。
自分の給金と、上司が受け取っていた賄賂で何とか借金とりに帰ってもらった西郷さんでしたが、農民の暮らしと自分の暮らしの違いにカルチャーショックを受けていた様子。
西郷さんちもあまり裕福でない描写がありましたが、農民たちはそれよりも辛い生活をしていることを実感したみたい。
年貢の決め方「定免法」と「検見法」
5年、10年の収穫高を平均して、その村(田んぼ)の年貢を決める方法が定免法(じょうめんほう)。
毎年田んぼの一区画を刈り取ってサンプリングし、規定量を満たしているか確認、それに応じて増減するのが検見法(けんみほう)。
西郷さんが働いている薩摩藩で取り入れられているのは定免法の方でした。
豊作の時には余った米をお金に変えたりも出来るので嬉しいですが、凶作だと収穫高に対する年貢の割合が大きくなる辛いもの。
そのため、西郷さんは財政再建のプロである調所広郷(ずしょひろさと)に知恵を借りることに。調所って難しい苗字ね。
その調所広郷が言うには、「我が藩では定免法で年貢を決めているが、収穫高に応じて年貢を決める検見法というやり方もある。自分で測るならそれでもいい」とのこと。
コストのかかる検見法
西郷さんが去った後、「まぁ無理だと思うけど」なんて言っているように、検見法だとかなり大変なんですよね。役人が自分で収穫高を確認しないといけないし。
本来は、この確認作業の合間、農民たちは作業しちゃいけないそうです。確認中の区画にある稲をこっそり刈り取れば、「今年は少ないですよね? ね?」みたいに不正出来ちゃいますものね。ドラマだと後ろで作業してたけど。
この期間は農作業が出来ないから、別の作物も作っている村だと、作業が出来なくて逆に収入が減るなんてこともあったみたい。
腐敗の温床にも
役人が確かめるということは、その役人を抱き込めばいくらでも誤魔化せるということ。
村によっては、確認に来た役人を宴会でもてなし、年貢を少なくしてもらうなんてこともあったみたい。
おもてなしのためにお金がかかることを考えると、採算取れるのか考えないといけない部分です。
あとは確認作業をめんどくさがって、適当に申告する役人もいたりと、役人の質に依存する部分が大きいようです。
隠した田んぼもバレます
ドラマでもあったけど、農民たちは山間の目立たないところを開墾して、出来た作物をそのまま自分のものにしちゃうこともあったみたい。
検見法だと、役人が直接確かめに来てしまうので、その田んぼがバレる可能性が高くなっちゃいます。
秀吉の太閤検地前だからだいぶ時代は違うけど、直虎の時も今川の役人が川名の隠し里にある田んぼを見つけちゃってました。
あの時は「帝の土地だから課税対象じゃないよ」なんていう政次のナイス言い訳で乗り切っていましたね。
どっちがいいのかな
こうしたことから、農民側から「定免法でお願いします!」と領主に持ちかけることもあったとか。
一定の年貢さえ納めれば、後は自分の蓄えにしていい定免法だと、農民も貯蓄を作りやすいのかもしれません。「このラインを越えれば……!!」というモチベーションにも繋がるし。
このようなメリット・デメリットを身を以て西郷さんに叩き込んだ調所広郷って実は優しいのかも。頭ごなしに「定免法じゃないとだめ!!」なんて言うより西郷さんの知識や経験が増えますからね。
財政再建のプロ・調所広郷
上で出て来た調所さん、今回は斉彬とも会話をしてました。
西郷さんと同じく財政に関してのやり取りをしている辺り、斉彬と西郷のシンパシーを感じます。
この会話にも出て来ましたが、調所広郷は500万両の借金地獄から薩摩を救い、さらには50万両のプラスを作ったすごい人。
現代の価値に換算すると、1両がだいたい10万円前後として、10万 * 500万 = 5000億円。
えっ5000億円?
年貢収入が14万両(ざっくり140億円)だったようなので、年貢だけではとても返しきれません。
その5000億円の負債を500億円の黒字にまで回復させるとかバケモノですか。
実際には1835年に「250年ローンの無利子」という形で商人たちに藩債を買わせたようです。これは明治に入ってからの廃藩置県によって藩債が無効化され、結果的に実質踏み倒し。
このローン、完済は2085年ですから、廃藩置県が無かったらまだ返している途中ですね。ビバ廃藩置県。
もちろん、琉球や清との密貿易の話を商人達に回していたようなので、商人達が一方的に損をするようなことはなかったようです。
他にも奄美諸島の砂糖を専売にしたり、ウコンなどの特産品を作ったりと、財政改革を行なった結果10年でプラスに。
えっ10年!?
そう、この調所さん、10年で5000億円の負債をプラスに変えたんです。バケモノです。
調所さんは無駄遣いがお嫌い
こうした調所さんの性格を考えると、斉彬がイギリスの脅威を説いて武器の備えを進言しても、財政面でGOを出せないのも納得。
というか5000億円の借金をこさえたのは斉彬のひいじいちゃん、重豪(しげひで)の浪費が原因。
調所を登用した重豪も重度の中二病患者蘭癖(らんぺき)で、同じく蘭癖の斉彬が浪費するんじゃないかと心配しているのです。
蘭癖はざっくり言うと西洋かぶれ。中学二年生の頃にカッコつけて洋楽ばかり聞いているのと同じ目で見られていたのかも。
今回の放送では舞台が1846年ですから、西洋の話題が耳に入る斉彬が阿片戦争の結果を知っているのも無理のない話。
「イギリスやべぇ!!」と気付いてしまった斉彬はその脅威を説くものの、ひいじいちゃんの蘭癖による財政のトラウマがあるため、斉彬の父、斉興(なりおき)は重い腰を上げません。
調所さんも、浪費が怖いので斉彬の弟である久光が注いでくれたらなーと思っています。
早速の三角関係
さて、お金の話ばかりになってしまったので、ちょっと和む話題を。
大久保利通が記録所書役助として働くことになったので、そのお祝いが催されました。
そこにやって来たのが、幼い頃共にハーフマラソンをした糸。
大人となり、綺麗になって再登場です。
大久保利通は糸を見てうっとりしていましたが、その糸は西郷さんを見てうっとり。恋する乙女です。
あぁ、三角関係。
去年の大河でも三角関係がありましたし、入れなきゃいけない縛りでもあるんですか。
あとこの糸を演じる黒木華さん、一昨年は幸村の最初の奥さん・梅でしたね。どちらもヒロイン的な立場ってすごい。
糸さん、西郷さんと一緒に農村に向かうとき、「男女七歳にして席を同じゅうせずなんて言うし、こんな風に歩いていたらデートみたいに思われちゃうね」なんて恋する乙女全開で話しかけていたのに、西郷さんはガン無視でした。
仕事に一生懸命すぎて、恋愛をおろそかにする系男子です。
守れなかった……
子供の頃の郷中教育の先生でもある赤山靱負(あかやまゆきえ)の力を借りて、斉彬に農民の苦しみを伝えようとする西郷さん。
その大事な手紙を斉彬に渡しに行く途中、糸が西郷さんに助けを求めます。
聞けば、また借金取りが来て、農民の子・ふきを連れて行こうとしているとのこと。
駆けつけて何とか救おうとするものの、ふきは決意を持って家族のために借金取りについていくことにしました。
嘆く西郷さん。力の無さを痛感します。
のちにデカい男になると知っているとはいえ、こうしたシーンは悔しさに共感してしまいました。
レイヤー間の対比が良い
今回のエピソードは、レイヤー(層)間の対比が良かったです。
農民と西郷さんのレイヤー、薩摩藩と調所さんのレイヤーの対比
借金に苦しむ農民を救おうとする西郷さん、借金に苦しんでいた薩摩藩を救った調所さんが対比されています。
西郷さんは力が及ばずにふきを借金取りに取られてしまうなど、救い切ることができませんでしたが、調所さんは薩摩藩の財政を立て直しています。
これにより、西郷さんがまだ未熟であることが痛いほど伝わって来ます。
ふきのレイヤー、斉彬のレイヤー
借金取りに連れていかれるふきは、最後に桜島を見て「綺麗だなぁ」ともう見ることができないことを覚悟していました。
一方、赤山先生が斉彬を足止めする際に「今日の桜島は綺麗ですよ」と言ったのに対し、「そうか? いつもと変わらんが」と返していたのは、前日に「帰ってくるときには藩主になる」と決意していたため。
また見ることができる前提での発言でした。
同じ日に桜島を見ているのに、立場によって見え方が違うのも対比によって浮き彫りになっていました。
農民、西郷さんち、薩摩藩の台所事情
今回の話のテーマとも言える、みんなの台所事情。
立場は違ったり、貧困の度合いは違えど、お金に苦しんでいるのはみんな共通していました。
逼迫具合によって、悲壮感の対比がなされていましたね。
薩摩藩の方は負債が無くなって多少の余裕がありそう、西郷さんちは宴会するくらいはできる、でも農民は米なんて食べたことない。
この辺りもまだ身分制度が残っている江戸時代の名残が浮き彫りに。
まとめ
西郷さんが年貢関係のお仕事に就いたため、今回は年貢の観点から薩摩台所事情を中心に感想を。
財政再建のプロ・調所広郷さんが「出来るものならやってみろ」と言いつつも年貢の制度について西郷さんに教えてくれているのも、ある意味優しさなのかも。
今回でまた力の無さを痛感した西郷さん。まだまだハードな道のりですね。
兄さぁ、姉さぁ、次でございもす。
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