いだてん47話(最終回)感想「時間よ止まれ」文化祭当日みたいなワクワク感
とどでございます。
最終回なのにポジティブな気持ちで見ていられる大河ドラマってすごいですね。主役の最期を看取るのではなく、成し遂げたその瞬間にスポットが当たった最終回でした。
まーちゃんと一緒に文化祭を準備していた感覚で見ていたので、当日にみんなが喜んでいる姿を見守っているとこちらも嬉しい気持ちになりました。
今回のサブタイトル
今回のサブタイトルは『時間よ止まれ』。1978年発売の矢沢永吉さんの曲が元ネタかな。
楽しい時間がいつまでも続いていて欲しい感じと、ずっと動いていた嘉納先生のストップウォッチが合わさった感じでしょうか。
嘉納先生のストップウォッチは、1964年の東京オリンピックが終わってから3年後、水泳の練習中にまーちゃんが止めちゃいましたが、そのタイミングは四三さんがストックホルムでマラソンのゴールテープを切った瞬間でした。
考えてみればあのストップウォッチは、ストックホルムオリンピックのマラソンでスタートした時に嘉納先生が動かしたものでした。ゴールしてないからずっと動いていた、というのがここまでたどり着いたのが良かったです。54年動いていたのがロマンシングでとても素敵。
2人の主人公たち
世界中の晴れを集めたような快晴の東京オリンピック当日、金栗四三と田畑政治が会場にいました。
幻となった1940年の東京オリンピックでは、嘉納先生から聖火リレーの走者を託されていたからか、それが1964年でも頭にあったみたいで、坂井選手に万が一のことがあったら代わりに走るくらいの勢いでいた四三さん。
足袋も履いてるし、暗記するほど読んだ嘉納先生からの手紙を持ってきているしで、準備万端でした(笑)
運営側の視点と選手側の視点でオリンピックに関わっているふたりが並んでいるのは感慨深いです。前半は金栗四三、後半は田畑政治と、最近はずっとまーちゃんといたような気がしていますが、どちらもストーリーがガッツリ描かれていて良かったです。
金栗四三の方はストックホルムオリンピックのあのエピソードが有名ですが、箱根駅伝の創始者というのもあり、今につながっている感覚は素敵です。ストーリーの方で言うと前半良く聞いていた「とつけむにゃあ」が今回ばり出てきて四三さんの兄の実次さんを思い出しました。
まーちゃんの方はいだてんを見るまで寡聞にして知りませんでしたが、東京オリンピックのキーマンとして一緒に走ってきた感覚があります。開会式の会場がオープンになった時にまーちゃんがお客さんを迎えに行っていましたが、なんだか一緒に迎えているような感覚でした。
やっぱり冷水浴
四三さんの著書でもしきりに勧められている冷水浴。今回は坂井選手の頭を冷やすために行われました。
考えすぎて走れなくなる前に、冷水浴で思考をリセットさせるあたりが四三さんらしいです。
店主から水をもらうシーンでは「落ち着いて話すためかな?」なんて思ってましたが、この人が四三さんだということを忘れていました。そうです、冷水浴の代名詞の金栗四三です。
ストックホルムでマラソンを走る時にも冷水浴してましたし、五りんが冷水浴しているシーンも回想の中で出てきましたし、「2019年の大河ドラマを象徴するものはなんですか?」と聞かれたら「はい、冷水浴です」と答えるのが正解かも。
2回見直したい聖火リレー
最終回なのにこんな仕掛け入れるなんてすごいな! と素直に感心してしまったのが、聖火リレーの受け渡しのシーン。
坂井選手が「なんで自分なんだ」と走ることを躊躇っていたけれど、四三さんの励ましによって頭空っぽにしてとにかく走るんだ! と覚悟を決めて、聖火リレーの最終走者として走り出すシーンで感動的でした。
実はこの聖火リレーの副走者として五りんが走っていたのですが、その様子は後半で描かれていました。他の副走者がはけていく中、ひとりだけ聖火を追いかけて、聖火の受け渡しのシーンの後ろでワタワタする姿がコミカルでした。
最初に見たときは全く気にしてませんでしたが、坂井選手が聖火を受け取るシーンではちゃんと五りんが後ろに映ってたんですね。録画していたのを見直したら本当にいてびっくりしました。
坂井選手が走り出すところで「がんばれ!」と前のめりで応援していたので、1回目は全く気付かず……。感情移入しちゃうと全く気付かない叙述トリックに引っかかったような感じで気持ち良かったです。
万歳の対比
嘉納先生の競技場で学生たちを送り出す時にされていた万歳。東京オリンピックの入場行進でもやっていましたが、今回は悲壮感はありません。
土砂降りだった過去との対比で快晴になっているのも感慨深いです。
「俺はここでオリンピックをやるぞ」と言っていたまーちゃんが有言実行し、本当に東京オリンピックを実現したんだから素晴らしいです。河野一郎が涙目になっているのもいいですね。
2人で参加したコンゴ共和国
コンゴ共和国から参加しているウガンダとヨンベのふたりは前回から結構出ていて、日本が初めてオリンピックに参加したストックホルムオリンピックでの金栗、三島と共通する姿として描かれています。
今回も選手入場前にヨンベがどこかに行ってしまったりなんてのがありましたが、ふたりとも堂々と入場行進をしている姿が印象的。
そして女子バレーの決勝をまーちゃんちで一緒に見ているとは思いませんでした。めちゃくちゃ仲良くなってるじゃんね。
クドカン出とるばい!
脚本だけでなく話にも出てきたクドカン。2代目タクシー運転手としての出演でした。
脚本を書いた本人が出てくるのもなかなかシュールですね。脚本書けるし演者もできるしのハイブリッドがいい感じ。
志ん生の富久は絶品
最終回も富久をやってくれるのが良かったです。「うちの親父が余計なことを言ったせいで距離がのびちまった」と愚痴りながらも、富久のように走る五りん、いいですね。
ちゃんと落語の方に寄せているのがうまかったなーと思います。前回謎の逃亡を果たした五りんでしたが、走る理由の伏線になっていました。三波春夫のところで弟子になって、それをやめた時にも「しくじっちゃいまして」なんて言っていたような感じでしたが、江戸じゅうでしくじって仕事を失った富久とリンクしていました。ここでも2話ごしの伏線。
最後は志ん生の元に駆けつけて、「富久はどうだった?」「絶品でした」のやり取り。とても良いです。
五りんの父である小松くんが満州で志ん生の富久を聞いて、日本橋から芝まで距離を伸ばした方が面白いよ、と言ったのを志ん生が取り入れたのでした。小松くんはその富久を聞いて走り出し、そのまま帰らぬ人になってしまったので、志ん生は感想を聞けてなかったんですよね。
今度は息子の五りんが、志ん生が富久をやっている間に走ってやってきて、その感想を伝えたシーンでした。この対比が気持ちよかったです。
ここは最後の四三さんパートのメタファーにもなっています。ストックホルムオリンピックの途中で行方不明になった四三さんが、54年の時を経てストックホルムに帰ってきてゴールする。富久をやっている間にいなくなった小松くんが葉書に書いた感想が、息子にバトンタッチしたものの、感想を伝えに来る。「志ん生の富久は絶品」というのは五りんの感想であり、小松くんの感想でもあります。それが今やっと志ん生に届いたのです。
五りんパートは金栗四三との繋がり、シマちゃんから小松くんへの流れ、志ん生との繋がり、まーちゃんとの繋がりと、いろんな人と繋がりがありました。
「オリンピックがいろんな人を結びつける」というコンセプトの架空の人物でしたが、後半からガッツリ物語に溶け込んでいたように思います。
最後は志ん生の息子と一緒に高座にいたので、一門に復帰して頑張っていくようです。良かった。
これが君の見せたい日本かね
1940年の東京オリンピックを招致する際には嘉納先生に「今の日本を世界に見せられるか」と問いかけました。あのときは嘉納先生が「オリンピックはやる!」と堅い決意でエジプトまで行き、その帰りに病に斃れたのでした。
今度は閉会式で、嘉納先生からまーちゃんに「これが君の見せたい日本かね」と問いかけがありました。「はい! いかがでしょう!」と自信を持って答えているまーちゃんが最高でした。
肌の色、民族、宗教に関係なく様々な人が入り乱れて歩いた閉会式は、まさにまーちゃんが思い描いていたオリンピックの姿。
「田畑、ありがとう」との嘉納先生の言葉があったあと、岩ちんが入ってくるあたりもいいですね。事務総長の立場にあった時から、退いた後もまーちゃんと一緒にオリンピックの準備をしていた岩ちん。彼に「岩田くん、ありがとう」と嘉納先生がしたようにお礼を言っているシーンがとても良かったです。この時だけ真面目に「岩田くん」と呼んでいるのもグッときます。
例のエピソード
エンディング中とかスタッフロール中に追加のエピソードが入るのは鉄板ですね。映画とかでもスタッフロール中に電話がかかってきて、「誰ね? 携帯の電源ば切らんね」と思ったら主人公の携帯電話で、最後にもう1エピソード入る、みたいなのはワクワクします。こういうのがあるので映画だとスタッフロールは最後まで見るタイプです。
四三さんがストックホルムオリンピックのゴールを果たすシーンは必ず入るものと思ってましたが、なかなか出てこないので「ガチで東京オリンピックで終わらすのかな?」と正直不安になっていました。
それがスタッフロール中に手紙が届くとか、個人的にめっちゃ好きな演出でした。しかもリアル四三さんの映像を使うなんて。四三さんの70過ぎとは思えない元気な走りを見られて良かったです。
ストックホルムオリンピックのマラソンとして54年8ヶ月6日5時間32分20秒3が記録されました。走っている間に結婚して、子供も生まれて、孫までできました、なんてドラマチックです。
最終回で主人公が生きてる大河
も新鮮でいいですね。喪失感がないので気持ちよく新年を迎えられそうです。
嘉納先生だけは物語の途中で逝去されましたが、金栗四三と田畑政治、志ん生は生きたまま物語が終わりました。
大河ドラマという枠で考えたら嘉納先生が主人公なのかも? 実際、彼がいなかったら日本はオリンピックに参加するのはだいぶ先になっていたかもしれませんし、そもそも存在を知らなかったかもしれませんからね。
まとめ
最初はクロノトリガーのごとくぽんぽん時代が飛んでいたのでついていくのが大変でした。しかし、なんだかんだ最後まで見ていると東京オリンピックの時代に伏線がガンガン回収されていくのが気持ちよかったです。
全部見た人はなかなかのマイノリティ(あなたと私しか見てないかも……?)ですが、全部通して見ると良くできていたお話だったと思います。恥ずかしながら最後の方は毎回泣いていたかもしれません。
最終回は長く準備をしてきた文化祭当日のようなカタルシスがありました。閉会式で花火が上がるシーンは本当にお祭りが終わるんだな、なんて感じでした。
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