麒麟がくる第二十六回感想「三淵の奸計」酔ったフリして朝倉をボロクソに言う十兵衛

麒麟がくる

とどでございます。

足利義昭様が朝倉さんの元で元服したことで、朝倉さんは義昭様の庇護者としての地位を確立しました。いわゆるゴッドファーザー的な立ち位置でファミリーで宴会を催したものの、「国内まとまってないし、上洛は無理じゃね?(意訳)」と光秀がのたまったので気まずい雰囲気があたりに充満しました。

事前に朝倉さんの重臣である山崎さんが光秀の家に訪ねてきて、「みんながみんな上洛を望んでいるわけじゃないから」と漏らしていたのもあり、光秀は強気でぶっ込んできました。

当然朝倉さんはお怒りになったものの、このあたりも含めて光秀の作戦だったのでは……と思いつつ、若かりし頃に酒に飲まれて松永久秀に財布を持っていかれたのもあって酒に飲まれるタイプなのかなと不安になってしまいますね。太夫との会話で酔ってなさそうというのは感じられましたけど。

義昭は結局織田信長のサポートを受けて上洛することになったようです。

悪貨は良貨を駆逐する

冒頭の足利義栄の体調が思わしくないシーンでは、内裏での腹の探り合いが行われていました。小籔氏が出ていると笑いが先に来てしまうのであれでしたが、近衛様にとっては色々と言われて大変な状況のようです。

質の悪いお金が朝廷に収められた、みたいな話がありましたが、ここで思い出した話を。

悪貨は良貨を駆逐する、という法則があります。同じ額面の貨幣の場合、より綺麗な方は手元に残しておいて、汚いものを先に使う、だから市場に出回っているのは粗悪な貨幣だよね、みたいな法則です。

例えば子供のお年玉として折り畳まれた千円札と銀行でおろしたばかりの新札の千円札があったとします。この時、何回も折られた千円札と綺麗な新札だったら、折られた千円札を先に使いたくなりますよね。

現代の貨幣は貨幣そのものに価値があるのではなく、額面の金額に相当する金(あるいは価値)との引換券になっています。なのでお札が綺麗だろうが汚かろうが価値は変わりません。

しかし、戦国時代は貨幣自体に価値がありました。そのため、額面が正しくても貨幣自体の質が悪いものがあったりと、悪貨が流通していたりするんですね。一般的な市場では額面が合っていればある程度は問題がないものの、朝廷にお金を収めるという意味ではまた問題が生じます。

近衛様が渡されたお金は形が歪なものとして表現されていましたが、朝廷に収めるお金が悪貨であるというのは朝廷の威光がなくなってしまっていることの証左。俗っぽい言い方をすれば三好一派が朝廷を舐めていることの表れですね。

近衛様は「将軍など誰がなっても同じ」という結論に至ったものの、それをサポートする陣営の質にも気を配らなければならないことを痛感させられました。

将軍のゴッドファーザー

足利義昭は元服を行い、朝倉義景はその烏帽子親となりました。元服を洗礼と同じ位置付けのように考えれば、洗礼の後見人になった朝倉さんはゴッドファーザー的な位置付けになります。

これは結構名誉なことで、義昭が将軍になったとしたらでかい顔できるということでもあります。

このまま後見人として後押しして上洛、となるかと思いきや、朝倉家の家臣たちがまとまっていなくて、上洛したらお供するよ派と、いやいやまずは国内の安定が先でしょ派がいます。

祝いの席ではゲスト参加の光秀に対して、朝倉義景のいとこである朝倉景鏡が「上洛するって言ってっけど、明智殿はどう思う?」とぶっ込んできました。無礼講だから好きなように言えと言われても、なかなか言いにくいのが多くの人ですが、光秀は「家の中もまとまってないのに上洛とか無理っしょ。論外かと」と正直に言いました。

義昭を見てこいと言われた時も正直に答えるように言われていましたし、ここも酔ったフリで言った感じを出しつつ、正直な気持ちをぶつけたのかもしれません。

前回信長と会ったことで大局的に国を作っていきたい姿を見ました。一方朝倉は力はあるけどそれを誇示して武家の中でイニシアティブを取りたいだけで国のことまでは見えていないのを感じました。何より前回の最後に家臣の進言を差し置いて子供の飼っている「ちゅう太郎」というネズミを探しに行ってしまいましたし、麒麟を呼べるような人ではないと光秀が感じ取ったのかもしれません。

ザキヤマさん悪い笑顔ですね

この宴会の出来事は光秀のスタンドプレーではなく、事前に山崎さんが光秀のもとにやってきたことも関係しています。「上洛するとなったらついていくが、家臣の中には必ずしも上洛を勧めているわけではないものがいる」と光秀に漏らしていましたので、この辺を光秀がうまく感じ取ったんでしょうね。

後になって分かった事ですが、ザキヤマさんや朝倉景鏡は足利義昭を支える三淵殿とつながっていました。朝倉さんの一番の家臣のような振る舞いだったザキヤマさんが他の家の人と話し合いながら悪い顔をしているのは戦国時代感があっていいですね。

犯人は明言されていませんでしたが、朝倉義景の子供である阿君丸(くまきみまる)が毒を盛られて命を落としたのもこの暗黒談合の仕業でしょうかね。タイトルの「三淵の奸計」を考慮すればやったのは三淵殿が濃厚。後継を狙って心を折りに行くのはまさに戦国の駆け引き。

毒味の女性に異変が起こった時、近くにいた女性が障子を閉めて布で呻き声を抑える芸当はまさにくのいちの動きでした。普通にスパイが入り込んでいる朝倉家の甘さが見えました。まぁこの甘さのおかげで光秀もご飯を食べさせてもらっているので強く言えないのですが(笑)

ちゅう太郎捕まってた

阿君丸が毒入りの海老汁を飲んで命を落としました。

悲しいシーンではありますが、ちゅう太郎が捕まっていましたね。本来は短い命であるネズミが、飼い主よりも長生きするという皮肉がなんとも言えない後味です。

跡取りをなくした朝倉さんは阿君丸の部屋でちゅう太郎を眺めながらボーッと過ごしているようでした。現代的な感覚からすると自分の子供がいなくなってしまって落ち込むのは当然のことだと思います。

ですが彼らがいる戦国の世ではこの隙を狙って悪い人たちが跋扈するんです。三淵殿はこの隙を逃すことなく義昭を信長のいる美濃に連れ出しました。目的を達成するために手段を選ばない強さは戦国ならではですね。

信長と手を組む覚悟

長らく主君のいない浪人として過ごしていた光秀ですが、今回は義昭との上洛を果たすために信長と手を組むことを決めました。やると決めたらとことんやる二人が組むのは、周りからしたら恐ろしいものです。

上洛すれば三好一派との戦いになりますが、幸い京が手薄なタイミングで上洛できそうなのでまさに好機でした。

今回は正式な家臣として契約を結んだわけではありませんが、もうそろそろ正式に織田家入りしそうな感じなので楽しみです。

煕子殿と相談した時にはちょっと弱気になっていた光秀も、煕子殿に背中を押されて「やるぞ!」と前を向いていたのが尊いです。

まとめ

朝倉義景の心を折りにいく奸計の回でした。これによって足利義昭の上洛をサポートするのは織田家に移りました。光秀もいよいよ信長の元で暴れ回る時が来たのかも。