いだてん7話「おかしな二人」はニール・サイモンの喜劇だそうで

2020年2月15日

海辺で走り込み

とどでございもす。

今回のサブタイトルは海を飛び越えアメリカの作家であるニール・サイモンの喜劇が元ネタです。

本編でも海を越えてスウェーデンを目指しているのでその辺を意識したのでしょうか。……って思ってたら陸路で行くんですね。シベリア鉄道に乗るために海を渡るからセーフですよ、セーフ。

今回はスウェーデンへの渡航費をどうにかするのがメインの話。お金はあるけどオリンピックへの参加を親や兄が許してくれない三島弥彦と、兄や家族がオリンピックへの参加を応援してくれるけれどお金がない金栗四三の対比が描かれました。

この二人、住む世界が違いすぎます。

あ、志ん生は今回空気でした。

今回のサブタイトル

アメリカの劇作家であるニール・サイモンの喜劇が元ネタです。多分。

おかしな二人は1965年に公開された作品で、東京オリンピックの翌年にあたります。

元々は劇用に書き下ろされた作品でしたが、後から映画にもなっています。このニール・サイモンさんの作品はたくさん映画化されていますね。

元ネタの方では性格が180度違う二人が織りなすドタバタコメディのようで、これに習っていだてんでも金栗四三と三島弥彦という性格のまるで異なる二人がドタバタする話になっていました。

今回志ん生は完全に空気でした。「二人」というと金栗四三と誰か分かりにくい気もしますが、一緒にオリンピックに出ることになった三島弥彦だったみたい。

住んでいる世界の違う二人

「恐れながらジゴロ(田舎者)」と藩主の父が笑われてから数十年、薩摩出身といえばエリート、なんていう時代になりました。

三島家は薩摩出身の爵位持ちの家。次男とはいえその家の子である三島弥彦はおとぎ話に出てくるような生活を送っています。

当時大人気だった乃木将軍まで三島家に遊びに来ていただなんて、すごすぎてよく分からない世界です。折しも時は明治45年、乃木将軍は明治天皇の崩御に殉じてこの世を去りました。金栗少年と会ったのは創作かもしれませんが、三島家はそれだけすごい家だったということなんでしょうね。

海外に行くにあたって金栗少年はアニコ先生のマナー講習を受けることになりましたが、農家の出身である金栗四三にとっては異次元の世界です。ナイフとフォークを使って食事をするなんて考えられません。

明治といえば文明開化して近代化した世界のイメージがありますが、農村だとそんなに変わらないんですよね。トラクターとか出てきたら発展した感じはありますけど、まだまだ人の力が主力の時代です。

勝先生の外套

中国からの留学生の学費まで背負い込んだ嘉納治五郎先生は金栗四三の正装を仕立てるお金を捻出するため、勝海舟から仕立ててもらった外套を質に入れてお金に替えました。

勝先生といえば西郷と並んで明治維新の立役者で、戊辰戦争の後も旧幕臣側の人々の名誉回復に務めた人です。西郷どんでは遠藤憲一さんが演じてました。あの勝先生が嘉納治五郎先生に正装をしつらえたのもすごいことですし、それを受けた嘉納治五郎先生が金栗四三に正装を買えるだけのお金を渡すのもいい話です。

自分の外套をそのまま渡すのではなく、本人の体格に合ったものを仕立ててもらいなさい、とお金を渡すのもかっこいいですね。10万円の男は伊達ではありません。

当時の1円は現代の紙幣価値にして1万円から2万円だと仮定すると、当時の10万円は現代の10億円から20億円。個人でそんな借金を抱え込むとか想像もつかない話です。現代の生涯賃金が約2億円ということを考えると、最大で人生10回分の金額を借りていたことに。

それだけ嘉納治五郎に信用があったってことですね。……なお生涯かけても返しきれなかったそうな。

自分のためではなく、人のためにお金を用立てていることを考えると、ちょっと応援したくなるかも。

すやさんからの支援

四三から手紙をもらって、お金を工面してやりたくても「もう田んぼを売るしかねぇ!!」と追い詰められる兄・実次。中村シドーさんの必死の演技が光ります。

いつもお世話になっている医者の春野さんに助けを求めるものの、すやさんのお父さんは困り顔。流石に患者にお金を貸すのは躊躇いますよね。それを見たすやさんが、なんと嫁ぎ先の庄屋さんの力を借りられるようにパイプを作ってくれました。

すやさんの覚悟と、庄屋さんの懐の広さを感じられます。いくら日本人初のオリンピック出場とはいえ、自分の妻の幼馴染(男)を支援するだなんて、懐広すぎです。

今回の最後に「1800円、持ってきたぞ!!」と笑顔で駆け寄ってきた実次さんも嬉しそう。

当時の1800円といえば、上と同じレートで換算すれば現代の1800万円から3600万円。これだけのお金をポンっと(貸して)くれたぜ!! ってなるのは恐ろしいことです。お金持ち。

弥彦が庭で駆け出したシーンが完全にあまちゃん

庭で三島弥太郎から釘を刺される弥彦。

すっと頭を下げて、土下座してでもオリンピック参加を許してもらおうとするのかと思いきや、クラウチングスタートを切って庭で短距離走をし始めました。

大河の枠でこうしたギャグシーンを突っ込むのもあれですし、音楽がもう完全にあまちゃんだしで変な笑いが出ました。

いだてんの音楽を担当している大友良英さんはあまちゃんのときも音楽を担当していましたし、セルフオマージュでネタをぶっこんできたようです。

やさぐれてるようでアドバイスしてくれる美川くん

金栗四三を東京に連れてきてくれた時には目立っていたのに、金栗四三のオリンピック参加が決まってからはひっそりと画面の端に映るだけだった美川くん。

今回はなんだかんだ結構アドバイスしてくれましたね。「自費で参加してくれ」という嘉納治五郎先生の言葉を鵜呑みにして金策に走る金栗少年に対して、「それは学校で持つのが筋」とアドバイスしてくれました。

こうやって冷静な立場で見てくれる友人がいるのも金栗四三にとって大きな財産です。

それにしてもこの美川くん、誰か有名な人なんですかね? (無知)

まとめ

誰も成し遂げたことのないことに挑戦するのは勇気がいることですし、お金の面でサポートを受けるのも一苦労。

練習をするために時間を使いたいのに、資金を確保するために時間を使うのは精神的にも辛いですね。

日本人初のオリンピック参加を成し遂げた金栗四三がいたからこそ、現代のアスリートたちも資金面で援助を受けられるようになったことを考えると、大きな功績だと感じます。

次回のサブタイトルは「敵は幾万」。ググったら軍歌が出てきてびっくりしました。

軍歌の元になったのは、山田美妙(やまだ びみょう)の「新体詞選」に収録された『戦景大和魂』です。この書き出しが『敵は幾万ありとても、〜』で、ここからそれっぽい詞を抜き出して軍歌を作ったみたい。内容を確認したい方は国立国会図書館のデジタルコレクションから読めます。

当時の世相を考えるとそういうのが流行ってた感じでしょうか。