いだてん3話「冒険世界」は明治の終わりから刊行された雑誌の名前
今年の大河もサブタイトルの元ネタば調べてみるばい。どうもとどです。
今回の「冒険世界」は明治の終わりごろに博文館から刊行開始された雑誌の名前から。スポーツ系の記事を載せていたようで、マラソンと初めて出会う金栗四三にぴったり……かも。
……と、前回の予告時点で予想をしていたのですが、まんま作中に出てきましたね。あの雑誌、本当にあったんです。
金栗四三は東京へと旅立ち、マラソンと出会いました。ボーイミーツガールならぬ、ボーイミーツマラソン。すでに幼馴染がいるしなぁ……。お見合いするなんて言ってましたが、どうなるのでしょうか。
あと今回は猫が何度も映っていました。今年は猫がいっぱい出るのでしょうか(期待)
サブタイトルの「冒険世界」
冒険世界は当時日本最大の出版社であった博文館から刊行されました。
博文館からは『文章世界』『農業世界』『少女世界』といったように「なんとか世界」と題された雑誌が多く出ていたみたい。今でいう「少年ジャンプ」「ヤングジャンプ」「ウルトラジャンプ」みたいに出版社が分かるようなネーミングにしていたのでしょうか。
国立国会図書館のデジタルコレクションにあるかなーと探してみましたが、オンラインでは閲覧できないようなので、中身を読むなら直で国立国会図書館に行くべし。原本は読めないようで、中身を複製したマイクロフィルムで閲覧できるとのこと。
冒険世界の主筆であり編集長は押川春浪(おしかわ しゅんろう)。彼は天狗倶楽部の創始者で、いだてんでは武井壮さんが演じています。今回は最後の方でマラソン大会の号砲を三島弥彦に渡すところでちらっと出てきました。
この冒険世界は大正に入ってから若者をターゲットに切り替えたらしく、「新青年」と名前を変えたそうです。「新青年」ではあの江戸川乱歩や横溝正史が連載していたそうで、今考えるとものすごく豪華な雑誌となってますね。
海外の探偵小説の翻訳もしていたようで、こちらもコナン・ドイル、アガサ・クリスティなどの錚々たるメンバーの小説が連載されていたみたい。……上でジャンプの名前を出したのに名探偵コナンの話みたいになってきましたね。
一家で見送り
海軍兵学校に落ちた金栗四三。失意のまま実家で農業をしていましたが、今度は嘉納治五郎が学長を務める東京師範学校、今の筑波大学に行きたいと決意。
家族総出で送り出し、電車と並走する兄ちゃんたち。中村シドーさんが鼻水垂らしながら走っている様は迫力があります。
それを冷ややかに見ている親友の美川くんもいい味出してますね。
「金栗氏〜、金栗氏〜」と雑誌片手に語りかける姿はまさにミーハーなオタクボーイ。夏目漱石の小説に出てくるヒロインに例えながら女の子をチラチラ見ているのが微笑ましいです。
池波志乃さんは志ん生の孫(ガチ)
大河に子孫出しちゃうぜシリーズ第2弾。いや、第何弾なのかは知らんけん適当に言いました。大河見始めたのは割と最近なので、過去にもあったかどうかは知らないルーキーです。
昨年の大河ドラマ「西郷どん」では、西郷従道の子孫である西郷真悠子さんが出演し、西郷従道の娘・桜子を演じていました。
今回は古今亭志ん生の孫、池波志乃さんが志ん生の妻役で出演。池波志乃さんはネジネジで有名な中尾彬さんの奥さんです。
自分のおばあちゃんを演じてるってことですかね。すごかー。
謎の弟子・五りん
神木隆之介さん演じる弟子・五りん。彼はオリジナルの登場人物らしいです。
オリンピック(五輪)の話に出てくるオリキャラだから「五りん」だなんて安直な感じがしますが、本当に落語家にいそうな名前なのがまたいい味出しています。古今亭五りん。
五りんは金栗四三がやっていた冷水浴を毎朝やっているそうな。「父の言いつけでやらないといけなくて!」なんて言ってたことから、父親が金栗四三の親戚か、金栗四三のファンだったとかそんな感じでしょうか。
冷水浴自体は金栗四三と明石和衛の共著『ランニング』でもオススメされているので、これを読んだファンが息子である五りんに「冷水浴やれ」と勧めたのかも。
『ランニング』は国立国会図書館のデジタルコレクションで読むことができるので、時間があるなら読んでみるのもいいかも。先週も同じことを書いたんですが、金栗四三は『ランニング』の中で特に冷水浴をオススメしています。よっぽどはまっていたんですかね。
もともと海軍兵学校に受かるために強壮な体を作る、なんて名目で始めた冷水浴でしたが、その後もずっと続けているガッツは見習いたいです。
今年も薩摩弁が聞けた
天狗倶楽部のエース、三島弥彦。彼は雑誌「冒険世界」でイケメン男子トップ10(誤訳)の運動部門で1位に選ばれたそうです。そりゃ女の子たちもキャーキャー言います。
彼の母親である三島和歌子は今回薩摩弁で喋ってました。薩摩弁を聞くとなんだか安心します。彼女のあだ名は「女西郷」。女性につけるあだ名じゃないですね。
徳冨蘆花(とくとみ ろか)の小説である『不如帰』のモデルになったとか何とかで、意地悪な継母として描かれていることに憤慨していました。抜き身の仕込み杖で街を歩くのはシュールですね。流石の西郷さんでもそんなことしないっす。多分。
和歌子が薩摩弁で喋っている通り、三島家は薩摩出身。
今回の時代では既に亡くなっていましたが、三島弥彦の父・三島通庸(みちつね)は薩摩士族です。寺田屋事件で有馬新七が命を落とした時、実は西郷従道と一緒にあの場にいました。
その後西郷さんに取り立てられたり、戊辰戦争で活躍したことから、明治新政府で山形や福島などの県令として働くことに。
明治18年には警視総監に就任。西郷どんでも出てきた川路利良と同じポジションです。正確には川路利良の時は大警視と呼ばれていて、3代目の樺山資紀から警視総監となり、通庸は5代目にあたります。
その後通庸は明治維新の功を讃えて子爵に列せられました。当時の爵位は公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の5段階なので、その4番目ですね。上の爵位は公家とか大名が並んでいることを考えると、自力でめちゃくちゃ頑張って地位を築いた人です。すごかー。
三島弥彦はその子供で、華族の御曹司でお金があり、学習院から東京帝国大学(今の東大)に進み勉学で努力を忘れず、スポーツは万能で何をやらせてもトップ、雑誌に特集されるレベルのイケメンで女の子にもモテ、人当たりの良さから同性からも慕われる——なんていうスーパーエリート。キャラ設定盛りすぎじゃないですかね……?
その三島弥彦が所属しているインカレサークルの天狗倶楽部が開いていたマラソン大会で金栗四三が初めてマラソンに出会うわけです。ボーイミーツマラソン。
スヤさんにお見合いの話が
属性てんこ盛りの三島弥彦に対して、幼馴染がいるというアドバンテージで対抗する金栗四三。いや別に対抗はしてないか。
その幼馴染のスヤさんにも、なんとお見合いの話が。でも本人はあまり乗り気じゃないみたい。四三の話を聞き、自分がやりたいことをやれと後押し。
親にお見合いを勧められて、自分の想いを出せないスヤさんの優しさを感じます。せめてあなただけでも、なんて。
夏休み明けで東京に戻る四三を自転車で追いかけるシーンとかベタで素敵。こいが青春ばい。
今回志ん生パート少なかったね
大人志ん生は出てきたけど、少年志ん生は少なかったです。寄席にはまって研究しまくってる感じでしょうか。金栗四三と神社ですれ違うのは良かったです。
こういう時代が行き来するお話は、自分が主体的にプレイしているゲームだとばりワクワクしますよね。クロノトリガーみたいにいろんな時代を行き来するのが好きです。
ドラマだと視聴者側は見ているだけになってしまうため、ジェットコースターか、あるいは夢の国のホーンテッドマンションにあるカートで運ばれてるような感覚になるかもしれません。やっぱり時代が一直線のウォーターフォール式の大河ドラマが楽でいいなぁ。
これはこれでドラマとしてはいいんだけどね。
まとめ
今回も金栗四三が中心でした。ある程度時代の流れに沿ってストーリーが進むと落ち着いて見ていられます。
次回のサブタイトルは「小便小僧」。1話で四三が弥彦の車の影で小便していたところからだと思いますが、該当する作品は上林暁(かんばやし あかつき)が1944年に発表した短編小説『小便小僧』かな。
明治から東京オリンピックまでの間に発表された小説なので多分これ。
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