麒麟がくる第二十四回感想「将軍の器」剣豪将軍義輝、最期の舞
とどでございます。
理想を追い求めながらそれを実現できない自分自身に悔しさを滲ませていた足利義輝。失意の中で最期を遂げました。
光秀とは「もっと早く会いたかった」とお互いに辛い別れになりましたが、まさか討ち取られるとは……。
将軍が空位となったことで次期将軍に誰を据えるか、という問題が浮上しました。実弟の覚慶さんか、いとこの義栄(よしひで)か、将軍家に仕える人々と将軍を傀儡にしたい三好一派で政争が行われています。
光秀も覚慶さんに会ってきましたが、その結果を朝倉義景に伝えると「見た範囲だと将軍にはどうかと思う」とぶっちゃけました。これは「死にとうない」と言っていた覚慶を政争に巻き込まないための方便でしょうかね。下手に将軍に擁立してしまったら、また闇討ちされてしまうかもしれませんから。
初対面の光秀にも弱さを見せられる人だからこそ、単なる神輿として擁立したくなかったのだと思います。
剣豪将軍斃れる
後の世では剣豪将軍とも呼ばれる義輝は、並居る刺客たちを無双ゲーのごとく斬って進みました。が、障子で視界を塞がれて討ち取られました。
ナレーションを被せてあるのがまた悲しいですね。十兵衛ともっと話をする時間を取れたらまた違ったのかもしれませんが……ただ賊が攻め入ってきた時に覚悟を決めて刀を抜く姿がカッコ良かったです。
求心力を無くしてふてくされていた姿を見せたこともありましたが、刀を抜いてからは情けない姿を見せることなく立ち回っていました。
松永久秀を撃つのか!?
義輝の訃報を聞いた光秀は大和国まで駆けつけました。目的は松永久秀に物申すため。
将軍は京から退いてもらうだけで命までは取らない、と言っていた松永久秀でしたが、息子たちが暴走して義輝を討ってしまったことに光秀激怒。
自分自身の監督責任を感じている久秀は「光秀だったら撃たれてもいい」と思っているからなのか、火縄銃に火をつけていつでも撃てる状態にして光秀に渡しました。銃口を自分の額に向けて固定するあたり、覚悟も決まっているようです。
約束を破ってしまったことについては自分の命で贖うもよし、光秀が撃たなければ情報を渡して今後を光秀に決めさせるもよしと、どちらに転んでも責任は取るつもりでいるのが伺えます。
光秀は「うおおおおお!!!!!」という叫びと共に庭に向かって引き金を引きました。真面目なシーンで言うのもアレですが、もし庭の方角とか、反対側の部屋に人がいたらヤバかったですね(笑) 変なことが気になってソワソワしちゃいました。
今回の松永久秀はみんなのケツを叩いて回る役割でした。幽閉されている覚慶さんに会いに行った時には「このまま座して死を待つおつもりか」と問うたり、光秀には「越前で座して時代が変わるのを待つつもりか」と発破をかけたり。
国を治めるようになってから色々と見える世界も変わって、将軍に対する考え方も以前とは変わっていることに光秀が驚いているのも印象的でした。
死にとうない
義輝の弟である覚慶さんに会いに行った光秀は、次期将軍として担がれそうになっている姿を目にしました。
履き物も履かずにボロボロの足になりながら「寺に戻ろうと思ってな」なんて言っていた覚慶さん。幽閉からは脱出したとはいえ、今度は自分自身を擁立しようとする勢力の真っ只中にいるのですから、逃げ出したくなったのかもしれません。
そのあと光秀に会って「ワシは死にとうない」と言っていたのも、将軍になれば命を狙われることが分かっていたからなのかもしれません。まさに自分の兄が辿った道をそのまま辿ってしまうこともあり得ますからね。傷だらけの足がこの「死にとうない」の本気度を伝えてくれます。
武士の時代のトップに立つなら、強さだけではなく恐怖、痛みを知っていることも大切です。民が奪われることの痛みを感じている状態ではついてきませんから。
こうした恐怖や痛みを曝け出した覚慶さんだからこそ、光秀は朝倉義景に「どうかと思う」と伝えて将軍擁立から外し、安全な場所にいられるようにしたのかもしれません。
放送後に覚慶を演じている滝藤さんはTwitterで『死ぬのが怖いだなんて、普通は初対面の人に言わない。あれは横にいる三淵や細川に語りたかったのかもしれない』と語っています。これはまさにその通りなんじゃないかなと思います。
将軍に対するスタンス
登場人物ごとに将軍に対するスタンスが違っていたのが興味深かったです。
特に伊呂波大夫が近衛さんに言った「将軍が誰になっても、それで武士たちが戦を始めようとも、私たちは痛くもない。むしろ戦で武士たちが全て滅んでしまえばもう戦が起こることはない」とラスボスみたいなセリフが印象深かったです。
以前、帰蝶さまの相談で武器や傭兵を都合したことがありましたが、あれも武士たちを戦いの場に送り込んで滅ぼすのが目的だったのでは……!? と邪推したくなるほどです。武士でない人で、特に京にいる人だったら武士たちが勝手に争って京を荒らしている訳ですから、「マジで勘弁してよ」と思うのも無理はありません。
近衛さんだって伊呂波大夫に相談した時には現在進行形で武士たちに脅されていたのですから、「どっちが将軍になってもええわ。潰しあったれ!」と思ってもやむなし。放送のラストでは「義栄を推挙します」と上奏しました。
松永久秀は以前は「将軍なんてなんぼのもんじゃい!」というスタンスでしたが、国を治めることを知ってからは「武家のトップこそ大事」と考えが変わりました。ただ考えを完全に切り倒したわけではなく、どこか迷っている様子もありそうな感じです。
三淵殿は「覚慶さまを擁立して本当に良いものか迷っている」と言葉として迷っていることを明らかにしました。一方、細川藤孝は「それはもう結論が出たはず。私たちは実弟の覚慶さまをお支えするんです」と自分にも言い聞かせるように強く言っていました。
覚慶さんと会ったあとの光秀は朝倉義景に将軍の器かどうかを報告するまでの間にほとんど自分の考えを語っていないのが興味深いですね。実際、光秀にとっては支えたいと思っていた将軍が討たれて、気持ちの整理もついていない最中に「次の将軍は!」なんて話になっちゃってますから、困惑もいいところだと思います。
次期将軍をうまく取り込もうとする朝倉義景
大和、京に行って将軍候補の覚慶さんを見てきた光秀は、越前に帰って結果を報告しました。朝倉義景が「ことと次第によっては越前にかくまっても良い」と言っていたのは、恩を売っておくためでしょうね。
光秀が「覚慶さまは将軍の器である」と言ってしまえば、「そうか! なら早速覚慶様を越前にお連れするのだ!」となるでしょうし、武田、上杉と並んで力のある大名である朝倉が覚慶擁立のために動くことも予想されます。
朝倉義景が光秀を動かしたのは前将軍の覚えが目出度かったこともあるので、結構戦略的に動いているようですね。
この政争に巻き込まれてしまったら、「死にとうない」と言っている覚慶さんを危険に晒すことになると考えた光秀は「覚慶さんを将軍にするのは正直どうかと思うわ」と告げました。
これをやられると朝倉義景としても目論見が外れた感じですね。「正直に言ってもいいですか?」と言質を取ってある以上、「いやいやそんなことないっしょ」と光秀の言葉をひっくり返すのも家臣の手前やりにくいでしょうからね。
この辺りは光秀の言葉通りに受け取ると「あいつダメそう」と光秀が言った感じになっちゃいますが、報告する際に覚慶さんの回想が入ったのはやはり彼を危険から守るためだったと考えるのが自然でしょうね。
まとめ
義輝が討たれ、次期将軍に誰を据えるかを巡って様々な立場から心情が語られたのが面白かったです。特にこれに対して光秀が自分の言葉で明確に語っていなかったのがいい演出だったと思います。
次回は信長から「わしにつかえぬか?」とお誘いがあったので、いよいよ光秀の活躍が期待できるかもしれません。
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