いだてん13話感想「復活」ストックホルムオリンピック編、完!
とどでございもす。
マラソンの競技中に意識を失い、結果リタイアとなった金栗四三。次の日に部屋で発見された時には記憶が曖昧になっていたので、ダニエルと一緒にマラソンコースを周って詳細を思い出すことに。
コースを間違えていたことがわかり、その先にいた家族に介抱してもらったことで一命はとりとめたものの、レースを棄権することになったことには変わりなく、悔しさを抱えながらも前を向いて次のオリンピックを目指します。強メンタル。
あと忘れてはいけないのがラザロの犠牲。涼しいはずの北欧でまさかの猛暑が襲いかかり、金栗四三とライバルであり友でもあったラザロがレース中に命を落としてしまいました。知識として知っていても、ドラマの中でこのエピソードが出てくるのは辛いです。
今回のサブタイトル
今回のサブタイトルは「復活」。トルストイの小説が元ネタだと思います。
日本で翻訳されたのは1905年、内田魯庵(うちだろあん)が訳したのが最初のようです。内田魯庵版は、彼が江戸生まれだからか、地の文もセリフも江戸っ子っぽいのが特徴です。
ロシアの名前の登場人物(ヒロイン)が「あいよ! どの道こうしてるよりましサ!」と江戸っ子口調で喋るギャップを楽しめます。
地の文でも「小ッぽけな」やら「町の真ン中だッても」やら「監獄の中だッても」みたいな感じの江戸っ子口調が並んでいます。江戸っ子の活弁士が喋ってる感じのナレーションをイメージしているんですかね?
ストーリーとの関連だと、金栗四三がマラソンをリタイアすることになったけれども、生きて恥をすすぐため、次の大会に向けて早速トレーニングを開始する点で「復活」しました。
民家で救出された
うだるような暑さの中で走り続け、意識が朦朧としている所に分かれ道。ラザロが必死で「No! No! No!」と止めてくれていましたが、金栗四三はどんどん違う道に進んで行ったようです。
フラフラでたどり着いたのはパーリィ中の民家。意識があるかどうかも分からないほど衰弱した金栗四三を見て、レモネードをグイグイ飲ませたり、シナモンロールを口に突っ込んだりと強制的に栄養補給を行なってくれました。
介抱の甲斐あって状態が落ち着いた金栗四三でしたが、ダニエルたちに見つけてもらってホテルまで連れ帰ってもらいました。
このシーンの悔し涙はグッときますね。日本で新記録を出し、大勢の期待を背負って挑んだオリンピックだったけど、最悪のレースコンディションで結果が出ず……。2週間前に出した手紙で明るく抱負を語っている口調との対比がまた切ないです。
余談ですが、金栗四三と救出してくれたペトレ家の交流はひ孫の代になっても続いているようです。金栗四三のひ孫さんは、ストックホルムのオリンピック100年記念マラソンに招待され、ひいじいちゃんがオリンピックで走ったコースを実際に走って完走したとか。んで、金栗四三が救助された地点ではペトラ家の子孫が当時と同じようにおもてなしをするなど、粋な計らいも。
詳細は玉名市の広報をチェック!
https://www.city.tamana.lg.jp/q/aview/186/9019.html
……で、後でNHKのTwitterを見て知ったのですが、今回金栗四三を助けてくれた民家の人々、ぺトレ家の子孫が演じてくれてたんですね。金栗四三の話でいつも協力してくれる優しい人々です。
ラザロの訃報
金栗四三が日本から持ってきた足袋をプレゼントしたラザロ。彼は過酷な競技の中で命を落としてしまいました。
金栗四三にとっても、ライバルであり友でもあった彼が亡くなってしまったのは辛いこと。一歩間違えれば自分もそうなっていたかもしれない状況だったことも辛さに拍車をかけています。
近代オリンピックで死者が出たのはこの大会が初めて。
ラザロの犠牲を忘れないよう、選手たちが犠牲になることのないオリンピック運営が求められます。
2020年の東京オリンピックでもマラソンが開催されますが、気温が上がりすぎないように早い時間にスタートとなる話が出ています。午前7時とか、午前6時なんて意見も出てきたりと、涼しい時間のうちに完走できるような時間で話し合われているみたい。
じっと見ている観客も暑い中で大変ですし、運営サポートのスタッフも大変です。涼しい時間に競技が行われるといいなぁ。
イメージだけだとリオオリンピックの方が暑そうですが、夏季オリンピックが開催される7月8月だと東京の方が気温が高いんですよね。
朝太の高座
志ん生パートも動きがありました。師匠から前座を任された若かりし頃の志ん生……今は朝太か。朝太は前座への初挑戦で尻込みしている様子。
清さんからもらった衣装を質に入れて、その金で酒を飲んじまう体たらく。
師匠から「お客さんは君の衣装を見にきているんじゃない、君の話を聴きにきているんだ」なんて暖かい言葉をもらって高座に飛び出したものの、お客さんからの注目が集まっているのを目の当たりにして頭が真っ白になっちゃいました。
ここでも「話は頭で覚えるんじゃない、足で覚えるんだ」なんて師匠の言葉を思い出し、体を使って富久の噺をする朝太。今回師匠が師匠してますね。
このシーンの森山未來さんがすんごい良かったです。富久の主人公である久蔵が走り回るシーンでは復活した金栗四三がトレーニングに励む姿と重なり、うまくドラマの内容にリンクしていました。こういうのでいいんだよ、こういうので。
朝太が「頭が痛いから今日はここまで」なんつって帰って行きましたが、初挑戦の舞台で途中棄権する姿は金栗四三と繋がっているようにも見えます。
大森兵蔵も帰らず
閉会式を待たずして帰る日本選手団。体格で及ばないという情報を持ち帰って次回に備えます。
が、大森兵蔵監督は体調が思わしくなく、一緒に日本に帰ることはできないようでした。
以前はギャグパートとして使われていた安仁子の「察してください」が、若干の悲壮感を伴って聞こえてきました。
起き上がれない大森兵蔵は手で「グッドラック!」とサイン。やっぱイケメンだこの人。
50年かけてでも体格や練習法を練り上げ、その時に勝てば良い、なんて未来を見据えていた大森兵蔵。作中で書き上げた『オリンピック式陸上運動競技法』は国立国会図書館のデジタルコレクションで読むことができるのでぜひ。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/859848
表紙とか、本の中の写真とかもそのまんまドラマに出てきましたね。
ストックホルムオリンピック編・完
という訳でストックホルムオリンピック編が終わりました。
日本人選手2人で乗り込んだストックホルムオリンピックは、結果だけ見ると世界のレベルの高さを思い知らされるものとなりましたが、これこそが大きな財産です。
この二人、それぞれの競技において、当時の日本ではトップの選手ですからね。その選手が全力で挑んでもメダルを取れないというオリンピックの厳しさをフィードバックとして持ち帰ることに意義があります。
「今の日本人のレベルで挑んでも恥をかくだけだ!」なんて言って挑戦をしないでいたら、そのフィードバックすら得られません。そういう意味ではこの二人が道を切り拓いてくれたことで今の選手たちが高いレベルで戦えているのかもしれません。
まとめ
日本が初めて参加したオリンピックであるストックホルムオリンピック。オリンピックを語るなら外せないオープニングの部分が完結しました。
金栗四三を知る上で外せない大会でもありました。次回からはお正月の風物詩、駅伝の開催に向けたお話でしょうか。
次回のサブタイトルは「新世界」。大阪の繁華街が元ネタ……ではないですよね、たぶん。1943年に出版された多田裕計(ただ ゆうけい)の小説「新世界」が元ネタですかね。
恥ずかしながら読んだことがないので内容との関連は予想がつきませんが、タイトルだけ見たら物語が新しいフェーズに進んだ感じがします。
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